理化学研究所 環境資源科学研究センター
技術基盤部門
質量分析・顕微鏡解析ユニット

顕微鏡施設

TEM observation

TEMによる細胞内微細構造解析

透過電子顕微鏡(TEM)は、細胞内部の微細構造を高分解能で観察するための代表的な電子顕微鏡法です。細胞小器官、膜構造、細胞壁、細胞間隙、分泌構造、微生物との相互作用などをナノメートルスケールで観察できるため、植物細胞、生物組織、微生物、培養細胞などの解析に広く用いられています。

TEMで細胞内部を観察する場合、試料は電子線が透過できる薄さにする必要があります。そのため、試料の固定、脱水、樹脂包埋、超薄切片作製、電子染色という一連の工程を経て、観察用試料を作製します。試料の種類や状態、観察目的、使用する電子顕微鏡の性能に応じて、固定条件、樹脂の種類、切片の厚さ、染色条件などを最適化します。

固定法は、大きく化学固定と物理固定に分けられます。化学固定は、タンパク質や脂質などを安定化させ、組織や細胞の形態を保持し、酵素による自己融解を抑えるとともに、試料に適度な硬さを与えるために行います。一般的には、グルタルアルデヒドやパラホルムアルデヒドなどのアルデヒド系固定剤による前固定と、四酸化オスミウムなどの重金属系固定剤による後固定を組み合わせます。物理固定については、高圧凍結技法の項目をご覧ください。

固定後の試料は、エタノールやアセトンなどを用いて段階的に脱水します。構造観察でよく用いられるエポキシ系樹脂は疎水性で水と混ざりにくいため、樹脂を浸透させる前に試料中の水分を取り除く必要があります。特に植物試料では、細胞壁や細胞間隙、空気を含む組織、硬い組織などが樹脂浸透の妨げになることがあるため、試料に応じて丁寧な脱水と樹脂置換を行います。その後、熱重合により樹脂を硬化させることで、超薄切片を作製できる硬さを持った樹脂ブロックを作ります。

TEM観察では、樹脂包埋した試料からウルトラミクロトームとダイヤモンドナイフを用いて、通常60〜80 nm程度の超薄切片を作製します。切片は銅グリッドなどに回収し、TEMで観察します。生物試料は炭素、酸素、窒素、水素などの軽元素を主体としているため、そのままでは電子線の散乱が少なく、十分なコントラストが得られにくい場合があります。そのため、酢酸ウラニルや鉛染色などの電子染色を行い、細胞構造に重金属を結合させることで電子密度を高め、膜構造や細胞内小器官を明瞭に観察します。

TEM試料作製は電子顕微鏡観察の基礎的な技術ですが、観察対象によって最適な条件は大きく異なります。固定液の組成、緩衝液、脱水条件、樹脂の種類、包埋方向、切片の厚さ、電子染色条件などのわずかな違いが、観察像の質に大きく影響します。当研究室では、これまでの植物試料や生物試料の共同研究で蓄積してきた経験をもとに、目的に応じたTEM試料作製と観察条件の最適化を行っています。

また近年では、FE-SEMに高感度な反射電子検出器が搭載されるようになり、準超薄切片をFE-SEMで観察することで、TEM像に近いコントラストの画像を取得する切片SEM法も利用できるようになりました。TEMによる高分解能観察と、切片SEM法による広域観察や連続切片解析を組み合わせることで、細胞内微細構造をより多角的に解析することができます。

→ 透過電子顕微鏡サンプル作製 構造観察用化学固定試料作製法
〜電顕で細胞内の微細構造を観察する〜(PDF)

→ DVD紹介ページへ

→ 切片SEM観察法

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