CLEM
光-電子相関顕微鏡法(CLEM)の開発
蛍光イメージング技術の発展により、蛍光タンパク質や蛍光プローブを用いて、細胞内のタンパク質、オルガネラ、膜構造、細胞内輸送過程などを、生きた細胞内で可視化できるようになりました。これにより、細胞内で起こる動的な現象を時間軸に沿って解析することが可能になっています。
一方で、蛍光顕微鏡で観察される蛍光シグナルが、実際にどのような超微細構造に対応しているのかを明らかにするためには、電子顕微鏡による観察が必要です。蛍光顕微鏡は目的分子やオルガネラの位置情報に優れていますが、膜構造や小胞、細胞内小器官の詳細な形態を直接示すことには限界があります。これに対して電子顕微鏡は、細胞内構造をナノメートルスケールで観察できますが、蛍光標識された分子やオルガネラをそのまま識別することはできません。
光-電子相関顕微鏡法(correlative light and electron microscopy; CLEM)は、同一試料・同一領域を光学顕微鏡と電子顕微鏡の両方で観察し、蛍光像と電子顕微鏡像を対応づける解析法です。蛍光像により目的分子やオルガネラの位置を特定し、その同じ場所を電子顕微鏡で観察することで、蛍光を発する構造の超微細形態を明らかにすることができます。
当研究室では、日立ハイテクと共同で、光-電子相関顕微鏡システム「MirrorCLEM」の開発に携わってきました。MirrorCLEMは、光学顕微鏡で取得した画像情報をもとに、同一試料上の観察領域をSEM上で効率よく再探索し、光学顕微鏡像と電子顕微鏡像を対応づけるためのシステムです。光学顕微鏡で得られる蛍光情報と、SEMで得られる高分解能な形態情報をつなぐことで、CLEM解析のワークフローをより円滑に進めることができます。(日立ハイテク)
植物試料では、細胞壁、大きな液胞、組織の厚み、ガラス基板への非接着性などにより、動物培養細胞で用いられる一般的なCLEM手法をそのまま適用することが難しい場合があります。そのため、当研究室では、植物組織や植物細胞に適したCLEM試料調製法の開発を進めてきました。例えば、樹脂包埋した厚切り切片や準超薄切片中に残存する蛍光タンパク質のシグナルを共焦点レーザー顕微鏡で検出し、その後、同一領域をFE-SEMで撮像して蛍光像と電子顕微鏡像を重ね合わせる方法を開発しています。
CLEM解析では、樹脂包埋や電子染色の過程で蛍光が減弱しやすいことが大きな課題です。当研究室では、退色防止剤を用いて樹脂包埋切片から蛍光シグナルを効率よく回復・検出する方法を報告しました。この方法により、樹脂包埋試料を用いたCLEM解析において、蛍光標識された細胞内構造と電子顕微鏡像をより確実に対応づけることが可能になりました。(PubMed)
さらに、CLEMとアレイトモグラフィー法を組み合わせることで、蛍光を発するオルガネラを電子顕微鏡レベルで同定し、その三次元構造を再構築する3D-CLEM解析にも取り組んでいます。連続切片を用いることで、蛍光シグナルで示された目的構造を、細胞内の膜系やオルガネラ構造と対応づけながら三次元的に解析できます。植物試料を対象としたCLEMでは、Os・エポキシ樹脂耐性蛍光タンパク質の利用や、連続切片SEM観察との組み合わせが有効であることが示されています。(J-STAGE)
これらの技術により、蛍光顕微鏡で観察される動的な細胞内現象を、電子顕微鏡レベルの実体構造として捉えることが可能になります。当研究室では、CLEM、切片SEM法、アレイトモグラフィー法、高圧凍結・凍結置換法を組み合わせ、細胞分化、環境応答、膜交通、オルガネラ動態などに伴う細胞内構造変化を、光学顕微鏡情報と電子顕微鏡情報の両面から解析する技術開発を進めています。