理化学研究所 環境資源科学研究センター
技術基盤部門
質量分析・顕微鏡解析ユニット

顕微鏡施設

Light Microscopy

光学顕微鏡観察法の開発

光学顕微鏡は、組織や細胞の形態を広い視野で観察するための基本的な顕微鏡法です。生物顕微鏡、実体顕微鏡、金属顕微鏡、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡など、目的に応じてさまざまな装置が用いられます。

生物試料を観察するためには、試料の厚さ、透明性、色素、表面構造、蛍光特性などに応じて、観察方法を適切に選ぶ必要があります。透過光で試料内部を観察する方法、反射光で表面構造を観察する方法、色素で組織や細胞を染色する方法、蛍光標識により特定の分子や構造を可視化する方法など、多様な工夫によって試料の情報を引き出します。

当研究室では、主に植物試料を対象に、光学顕微鏡観察のための染色法、切片作製法、透明化法、凍結切片作製法、蛍光観察法などの技術検討を行っています。これらの技術は、単独で組織や細胞の形態を解析するだけでなく、電子顕微鏡観察に先立つ観察領域の選定、CLEM(光-電子相関顕微鏡法)、レーザーマイクロダイセクション、質量イメージングなどの前処理技術としても重要です。

光学顕微鏡観察は古典的な手法でありながら、試料作製条件や観察方法の選択によって得られる情報が大きく変わります。当研究室では、植物の組織構造、細胞形態、表面構造、蛍光シグナルを正確に捉えるために、目的に応じた光学顕微鏡観察法の最適化を進めています。

金属顕微鏡による反射光観察

金属顕微鏡は、基板、金属材料、電子部品など、光を透過しない試料を観察するために用いられる反射光型の光学顕微鏡です。通常の生物顕微鏡では、試料の下から光を当て、透過した光を観察します。一方、金属顕微鏡では、試料の上から光を当て、表面で反射した光を観察します。

植物の葉や茎などの生物試料でも、透過光観察と反射光観察を使い分けることで、同じ試料から異なる情報を得ることができます。透過光では、組織内部の色素や細胞の重なり、葉脈などが観察しやすくなります。一方、反射光では、葉の表面構造、毛状突起、気孔、表皮細胞の凹凸、ワックス層などが観察しやすくなります。

例えば、観葉植物のゼブリナの葉を上から反射光で観察すると、葉の表面の光沢や色彩、表皮構造が強調されます。一方、下から透過光で観察すると、葉の内部を通過した光によって、色素の分布や組織の厚みが異なる見え方を示します。同じ葉であっても、照明方向や観察方法を変えることで、まったく異なる像が得られます。

ゼブリナの葉で赤く見える部分は、液胞内に蓄積したアントシアニン色素を含む細胞です。また、唇のような形に見える構造は気孔であり、植物がガス交換や蒸散を行うための重要な表皮構造です。このように、光学顕微鏡観察では、植物の組織構造や細胞の特徴を比較的簡便に観察することができます。

また、ユキノシタの葉の裏側を金属顕微鏡の反射光で観察すると、表皮細胞、毛状突起、気孔などの表面構造を立体的に捉えることができます。植物の表面は凹凸が大きく、一度の撮影では全体に焦点を合わせることが難しい場合があります。そのような場合には、Z軸方向に焦点位置を少しずつ変えながら複数枚の画像を取得し、焦点の合った部分だけを抽出して重ね合わせる深度合成を行います。これにより、凹凸のある植物表面でも、広い範囲に焦点の合った鮮明な画像を得ることができます。

このような反射光観察や深度合成は、電子顕微鏡観察の前に試料表面の特徴を把握するためにも有効です。当研究室では、光学顕微鏡による広域観察と電子顕微鏡による高分解能観察を組み合わせ、植物試料の構造を多階層的に解析しています。

関連資料

質量分析・顕微鏡解析ユニット

理化学研究所横浜キャンパス

© RIKEN CSRS KIMINORI TOYOOKA ALL RIGHTS RESERVED