SEM observation
切片SEM法による広域・高分解能観察
近年、走査電子顕微鏡(SEM)の電子銃、反射電子検出器、ステージ制御、画像取得システムなどの性能向上により、スライドガラス、カバーガラス、シリコンウェハなどの基板上に載せた樹脂切片を、SEMで高分解能に観察できるようになりました。樹脂切片を反射電子(backscattered electron; BSE)検出器で撮像することで、透過電子顕微鏡(TEM)像に近いコントラストで細胞内微細構造を観察することができます。
このように、樹脂切片をSEMで観察する方法を、当研究室では「切片SEM法」と呼んでいます。切片SEM法では、TEMよりも厚い準超薄切片を用いることができるため、広い範囲の組織構造と細胞内微細構造を同時に捉えやすいという利点があります。また、スライドガラスやシリコンウェハ上に切片を載せて観察できるため、光学顕微鏡観察、蛍光観察、電子顕微鏡観察を同じ試料上で連携させるCLEM(光-電子相関顕微鏡法)にも適しています。
試料作製は、基本的にはTEM試料と同様に行います。化学固定または高圧凍結・凍結置換法により試料を固定し、脱水、樹脂包埋を行った後、ウルトラミクロトームと光学顕微鏡用または電子顕微鏡用のダイヤモンドナイフを用いて、厚さ約100 nm〜2 µmの準超薄切片を作製します。作製した切片は、スライドガラス、カバーガラス、またはシリコンウェハ上に回収し、必要に応じて色素染色、電子染色、導電コーティングを行います。その後、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)のBSE検出器を用いて撮像します。
切片SEM法では、SEM観察前にトルイジンブルーOなどで色素染色し、光学顕微鏡で観察部位を選定した後、同じ切片をFE-SEMで観察することができます。この特徴により、TEM観察では探し出すことが難しい限られた領域や、発生過程の特定段階にある細胞を効率よく電顕観察できます。さらに、連続切片を同じ基板上に並べて撮像し、画像を位置合わせすることで、細胞やオルガネラの三次元構造を再構築するアレイトモグラフィー法へ展開できます。
従来のTEMは、極めて高い分解能で細胞内構造を観察できる一方で、観察範囲が限られ、広域の組織構造や多数の連続切片を効率よく取得することには制約がありました。切片SEM法は、TEMの高分解能性と光学顕微鏡の広域性を橋渡しする技術として、植物組織、発生過程、細胞壁形成、オルガネラ動態、CLEM解析などに有効です。
当研究室では、切片SEM法を植物試料へ応用し、広域の組織観察、光-電子相関観察、連続切片による三次元再構築に取り組んできました。また、この技術基盤は、樹脂包埋試料の断面を広域に観察する断面研磨SEM法や、根圏・土壌・微生物を含む複合試料を解析するbioCP-SEMへも発展しています。