開発技術

TEM構造観察法

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 細胞内部を観察しようとした時、大まかに図のような流れで試料作製が行われます。試料の種類や状態、観察目的、使用する電子顕微鏡の機能や性能によって、固定や樹脂包埋、切片作製など、この中から最適な方法を選択します。
固定とは化学固定と物理固定に大別されます(物理固定に関しては→高圧凍結技法の詳細 をご覧ください)
 化学固定とはタンパク質や脂質などを変性させ、組織や細胞の形態を保持し、酵素による自己融解を阻止すると同時に、組織に適度な硬さを与えるために行われる操作で、一般的にアルデヒド系固定剤による前固定と、四酸化オスミウムなどの重金属系固定剤による後固定の二段階で行われます。
 脱水・樹脂包埋とは、構造観察でよく用いられるエポキシ系樹脂は疎水性で水に馴染まないために、脱水する必要があり、粘度が高いために植物試料は丁寧な樹脂置換を行う必要があります。熱重合により硬化することで、超薄切片を作製できる硬さを得られます。
 TEMで組織や細胞の微細構造を観察するためには、試料を電子線が透過できる薄い切片にしなければなりません。そのための方法が超薄切片法で、通常は厚さ6080nmの切片を切り出します。生体試料は電子線散乱が少ない低元素で構成されているので、酢酸ウラニルや鉛を用いた電子染色により重金属を吸着させ散乱を高め、電顕像のコントラストを高めて観察します。
 基礎的な手法でありますが、観察する試料により固定方法や脱水方法、樹脂の種類など異なり、また、各研究室によっても異なります。下記のプロトコルとDVDは、当研究室で様々な共同研究で一般的に用いられている方法です。

透過電子顕微鏡サンプル作製構造観察用化学固定試料作製法
 〜電顕で細胞内の微細構造を観察する〜 (
pdf)

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 また、
FE-SEMに高感度な検出器が開発されたことで、準超薄切片をFE-SEMで観察することで、TEMのような像を得る手法もあります(→切片SEM観察法