開発技術

SEM構造観察法

Stacks Image 17
 SEMで細胞の表面を観察しようとした時、大まかに図のような流れで試料作製が行われます。試料の種類や状態、観察目的、使用する電子顕微鏡の機能や性能によって、固定方法や観察面の剖出、試料乾燥法、導電処理など多種多様な組み合わせがあり、この中から最適な方法を選択します。
乾燥した試料の場合、無処理で観察することが可能ですが、水分を含む試料の場合は前処理を行うことではじめてSEM観察が可能になります。
 固定はTEMの固定の基本とほとんど変わらず、タンパク質や脂質などを変性させ、組織や細胞の形態を保持し、生体時とほとんど変わらない状態で保存するために化学固定が行われます。一般的にアルデヒド系固定剤による前固定と、四酸化オスミウムなどの重金属系固定剤による後固定の二段階で行われます。
 SEMの内部は真空であることから、試料を乾燥させる必要がありますが、水分を含む試料を大気圧中で乾燥させると、水の表面張力が働き、組織や細胞の微細構造が損なわれます。そこで、エタノールなどを用いて予め試料から水分を取り除き、t-ブチルアルコールによる凍結乾燥法や臨界点乾燥法などの試料乾燥法を行います。
 乾燥した試料をSEMの試料台へ載せることを載台といい、載台する際の接着剤は動かないように固定することはもちろんですが、試料の帯電を抑制する性質が求められ、導電ペーストや導電性両面テープが用いられます。
乾燥した生物試料には導電性がほとんどないため、電子線を照射した際に電子が試料内に蓄積し、コントラストの異常や歪みが生じて観察像に影響を与えます。この現象を帯電(チャージアップ)といい、試料に導電処理を施して未然に防ぐ必要があります。オスミウムコーター、イオンスパッタ法、カーボンコーティング法などの方法がありますが、オスミウムコーターは僅か12nm程度の薄いオスミウム膜をコーティングでき、表面構造が複雑な試料でもムラなく蒸着できるため、FE-SEMを用いた高分解能観察に適しています。
 基礎的な手法でありますが、観察する試料により固定方法や脱水方法、試料乾燥法など異なり、また、各研究室によっても異なります。下記のプロトコルとDVDは、当研究室で様々な共同研究で一般的に用いられている方法です。

走査電子顕微鏡サンプル作製 〜表面観察/植物組織・細胞〜pdf

DVD紹介ページへ