開発技術

高圧凍結技法

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 化学固定によるゆっくりとした細胞固定の過程では様々なアーティファクトが加わり、電顕における観察像は生体の真の姿を正確に反映しているとは言えません。そこで生体に限りなく近い状態で観察することを目的に、20年ほど前に凍結技法が開発されました(文献)。細胞はその60%以上を水分で占められていることから、常圧では0℃以下に冷却されると氷の結晶(氷晶)が急速に形成され、細胞は著しく損傷し、観察不適になります。高圧凍結技法(High pressure freezing; HPF)は、高圧下では水の融点が低下し、氷晶形成が常圧より起こりにくいことに基づき開発され、氷晶を形成させずに凍結可能な試料範囲を、大幅に広げています(数百μm)。しかし、実施するのに高価な高圧凍結装置が必要であること、高圧による試料変形の可能性があることは、難点としてあげられます。高圧凍結装置として、Leica社のHPM100やEM-PACTなどがあり、当研究室では12年ほどEM-PACTを用いて技術検討を行い、2017年度にLeica EM ICEを導入しました。
 凍結固定した試料を樹脂包埋する場合、一般的に試料凍結後に、凍結置換法を行います。アセトンなどの有機溶媒に固定剤を溶かした固定液を、氷晶の再形成が起こらない-80ºC以下の低温で試料内に置換した後、徐々に温度上昇させます。その後、樹脂包埋、薄切を行い、TEM法または切片SEM法で観察を行います。
(詳細)
日本植物形態学会誌 PLANT MORPHOLOGY 2019 年 31 巻 1 号 p. 25-29
「高圧凍結法を用いた植物の電子顕微鏡解析」佐藤 繭子, 若崎 眞由美, 後藤 友美, 豊岡 公徳